(全6回)第3回:動物の出没を地図とカレンダーで見ると?

出没データや予測値は、表やグラフで見ると分かりにくいことがあります。 しかし、地図やカレンダーと組み合わせることで、直感的に「どこが危ないのか」「いつ気をつけるべきか」が分かるようになります。今回は、私たちの研究で実際に用いている「視覚的に伝える」技術をご紹介します。

第2回のおさらい:動物の出没は、予測できる「行動パターン」から見えてくる

第2回では、「動物の行動を未来予測するってどういうこと?」というテーマで、 クマやシカなどの野生動物の出没が予測可能であること、そしてその予測がなぜ重要なのかを解説しました。

動物の行動は完全にランダムではなく、天候や季節、食料の有無、人の活動など様々な要因と関係しています。 これらのデータをもとに「いつ・どこで出没しやすいか」という傾向を読み解くことで、 事前にリスクを把握し、対策に活かす「予測型の獣害対策」が可能になるのです。

予測は魔法ではなく、過去の情報と傾向をもとにした「確率的な見通し」です。 それでも、事前に危険度の高いエリアや時期を知ることができれば、 私たちの備えや行動を大きく変える手がかりになります。

第3回:動物の出没を地図とカレンダーで見ると?

出没データや予測値は、表やグラフで見ると分かりにくいことがあります。 しかし、地図やカレンダーと組み合わせることで、直感的に「どこが危ないのか」「いつ気をつけるべきか」が分かるようになります。

今回は、私たちの研究で実際に用いている「視覚的に伝える」技術をご紹介します。

どこで出た?――地図で見る動物出没

まず、「地図で見る」という視点です。

2022年度のクマ出没状況
2023年度のクマ出没状況

地図の良さは、「地点」と「周辺の状況(山、農地、集落など)」を同時に見られること。 これにより、「ここはクマが通りそうだな」「この山から来た可能性がある」といった仮説も立てやすくなります。

いつ出た?――カレンダーで見る出没傾向

次に、「いつ出たか」をカレンダー形式で見る方法です。

カレンダー形式で表示することで、出没傾向を「季節感」として捉えることができます。 これは地域住民にとっても非常に実用的な情報になります。

組み合わせて見ると分かること

「地図」と「カレンダー」を組み合わせると、以下のような情報が得られます。

これにより、「特定の場所で、特定の時期に、注意すべき」という知見が得られ、具体的な行動につながります。

実際の活用に向けて、いま取り組んでいること

私たちの研究チームでは、こうした地図やカレンダーによる視覚化手法を活用し、将来的に以下のような社会的活用を目指して研究を進めています。

現在は、動物の出没データを地図・カレンダー上に可視化しながら、どのような出没傾向があるか、そしてその情報がどう活かされるべきかを検証している段階です。 社会実装にはまだ至っていませんが、将来的には、住民や行政にとって役立つ情報提供ツールとして展開することを目指しています。

未来への一歩:地図とカレンダーの進化

今後はさらに、

など、地図とカレンダーをベースにした次世代の情報提供が期待されています。

次回予告

次回からは、こうした未来予測を支える「AIや機械学習の仕組み」について、少しずつ丁寧にご紹介していきます。

2025-06-20